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待って
「頑張って書いたんだけどな……。せめて、読んで欲しかった」
なにを言ってるの?
「朝、ルカが俺を見て通り過ぎた理由が分かった」
いや分かっていたらそんな反応しないと思うんだけど。
なんで泣きそうなの? 泣きたいのは僕の方だよ。
「分かった……もうルカに、近付かない。今までごめんね」
何が何だか分からないよ。
じゃあね、と言って彼は駆け出してしまった。
待って!
「……!」
僕の喉は空気を震わせることができない。
彼はあっけなく僕の前から消えた。
僕はレオになにかを誤解されている気がする。
これが答え? ってなに? 手紙読んだよ。擦り切れるくらい読んだよ! 朝君の前を通り過ぎたのは恥ずかしかったからだよ。
どうして……? 全然伝わってない。
答えを弁明する余地もない。そもそも僕は喋れない。
引き止めることすら、たったそれだけのことすら、他の人なら簡単にできてしまうことすら僕はできない。できない。できないできないできないできないできない!
なんで……!
レオは僕が雪だるまを壊したと思っているんだろう。壊すわけないじゃん。
壊すわけがないんだよ、どうして。
どうして僕の好きって気持ちは届かない。
声がないから。
どうしてだよ。
堪らなくなって深いため息を吐いた。ため息は白くなった。そしたら僕の目から堰が切れたように涙がぼたぼた溢れてくる。
おもむろにポケットに入れていたレオの手紙を取り出して読んだ。
レオの気持ちは僕に届いているのに。
僕の気持ちはレオに届かない。
僕が喋れないばっかりに。
好きなのに。レオ。
僕の気持ち はどこへ行った?
誰の元に届いたんだろう。レオ以外の誰かに届いたということもショックだった。ショックだし後悔の津波で溺れそうになる。
レオに届かなければ、あんなものただの僕の気持ち悪さの露呈にしかならない。
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