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レオが笑ってくれるならそれでいい
教室に戻るのも嫌だ。これから合同の劇練習だなんて、考えるだけでも吐きそうだ。
消えたいとこんなに思った時はない。
だけど時間は残酷で、僕の耳は予鈴の音をはっきりと聞き取る。
今このまま、時間が止まってしまえばいいのに。
いや今はやめよう。三日前に戻りたい。いや……三日前も嫌だな。
あれ……。僕本当に、レオになにもしてあげられてない。
レオが僕の気持ちを間違ったのは、身から出た錆なんじゃないか。案外そうなんじゃないか。
とりあえず予鈴を無視して雪だるまの死んだ花壇に腰掛けた。
鼻水をすすりながら涙を止めようと目を閉じる。外気が冷たくて火照った体に気持ちいい。少し冷静になった。言っても本当に少しだけどね。
誤解を解くにしても僕は喋れない。手紙を書いても、あの状態のレオは絶対に受け取ってくれないような気がするし、かしこまった感じがして非常に重い。はいといいえの意思表示しかできない僕が、彼とコンタクトを取ったところで泥沼になること間違いない。
なにせ今はレオが僕を拒絶している。だから誤解は解けそうにない。もうこの際しかたない。それはもう、解けないのだったらとりあえず置いておこう。
だったら僕にできることってなに?
僕はしばらく考えた。レオは孤独な僕に、一人では決して感じることができなかった気持ちを与えてくれた。それはすごく嬉しかったから。
……僕もレオになにかを与えよう。
『学芸会の主役をやることは、留学が終わってもきっといい思い出になると思うの』
鳥口の言葉を思い出す。
そうだ。
彼に素敵な思い出を残してもらうために……僕ができること。
それは劇をなにがなんでも成功させるってことだ。
僕が彼になにかを与えられるとしたらそれだけだ。
……うん。
それなら、僕は今こんなところで劇の練習をサボっているわけにはいかない。
僕も参加しなきゃ。
涙をごしごし擦って、塀の脇に降り積もっていたふわふわの雪の中に顔を埋めた。冷たい。頬を叩いて自分を叱咤する。
できることをやるしかない。
レオが笑ってくれるならそれでいい。
そうしよう。僕を大好きだと言ってくれた彼のために。
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