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エミリとアイリ
エミリはよろしくね、と言ってくれた。すごく落ち着いていて優しい大人の声だった。エミリの隣にはもう一人女生徒が座っている。
多分アイリという女生徒なのだと思う。僕はよろしく、と頭を下げようとして顔をまじまじ見てしまった。アイリは髪を二つ結びにしていて眼鏡も掛けていないけれど、エミリと雰囲気がまるで同じだった。
僕の反応を見て、二人は同時に全く同じ声で笑う。
「驚かないで」
「私たち双子なの」
どっちがどっちなのか眼鏡を外されたら分からない。
僕の反応で、エミリとアイリは顔を見合わせた。
「私たちのこと知らない?」
知らない。うん、と頷く。
「双子って目立つのに……知らないのあなたくらいよ。ねえアイリ」
「そうね。まあいいわ……でも私はあなたのこと、少し気になっていたの」
なんでやねん。首を傾げる。
「だって、ねえ」
アイリがエミリの方を向いて笑う。
「あのマミコがすごく気にしてる男の子だから」
二人は息を合わせて、囁くような声で僕に囁いた。
僕は思った。
知るか。
まだ衣装になっていない大きな布を指差す。彼女たちは僕をみる。
僕は断ち切りばさみをとって、シャキシャキとそれを鳴らした。
裁断しようか、と伝えたつもりだ。
僕のボディランゲエジは成功したみたいだった。
エミリが首を横に振る。
「まだよ。型紙からなのよ、デザインは決まったんだけど」
「こういう感じ」
アイリがラフスケッチを僕に見せてくれた。
ピンクの薔薇の花びらみたいに綺麗なドレス。これを作るのは骨が折れそうだった。
それに姫のものは決まったみたいだけど、王子の衣装は決まっていないらしい。
確かに二人じゃどうにもならなさそう。
僕は頷いてブレザーを脱いだ。
鉛筆をとって二人にこくり、と頷きかける。ガッツポーズをした。頑張ろう、って言ったつもり。
彼女たちは笑って言った。
「頑張りましょう」
あれ……僕、会話できるじゃん。
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