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あなたって
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それからまず、僕は王子の衣装もデザイン案を考えよう、と身振り手振りで提案した。エミリもアイリも真剣に僕の提案を聞いてくれて、図書室へ行って中世のヨーロッパのコスチューム大全と睨めっこしてなんとか完成させた。
衣装班は、その中でもいくつかの班に分けられているようだった。魔女の衣装の担当をする班、王と王妃の衣装を担当する班、その他などなど、随分細分化されていた。エミリとアイリは花形の王子と姫の衣装の担当で、僕もその二つの衣装を手がけることになった。
型紙を作って、布を買い裁断をして、ミシンにかけるころには僕が裁縫班に入って一週間が経っていた。
風邪で休んでいた他の班員の二人は僕が入ったことに反旗を飜しついにはボイコットしてしまった。僕はどんだけ評判悪いんだよ。
「あなたが気にすることじゃないわ」
エミリがテグスできらびやかなビーズを衣装に飾り付けしながら言う。
僕は刺繍をしながら苦笑するしかなかった。
「正直あの二人よりあなたの方がずっと戦力になるしね。本当に裁縫が上手なのね。私見直したわ」
と、アイリ。
「あなたって思ってたよりずっと面白いし」
と、エミリ。
僕はそんなに彼女たちに媚を売ったつもりはない。劇を成功させたい一心だった。正直それ以外のことはどうでもいい。
それから話の流れでエミリとアイリは鳥口と仲が良いこともなんとなく察した。だからこそ、鳥口はエミリとアイリに自分とレオが着ることになる衣装を担当させたのかもしれない。
僕は鳥口になぜか敵視されているので、敵視されている人間と仲がいい人間と友好的な関係を築くと言うのもなんとなく気が引けた。だから劇の練習の時間以外では関わらないようにしたし、彼女たちもそれ以外の時間はずっと鳥口の傍にいた。
あまり関わらない方がいいのだ。一時的に手を組んでいるに過ぎないのだから。
遠くの方で、レオと鳥口が稽古をしている。
脚本にどういったアレンジが加わったのが僕はいまいち分からない。だけど眠り姫のクライマックスである、目覚めのキスは消えるわけがないだろうなと思った。僕はあんまり気が乗らない。いやあんまりどころか随分気が乗らない。と言うかはっきり言って嫌だし不愉快だ。鳥口に嫉妬する。でも……僕が姫をするよりも、鳥口がした方がずっと様になっている。だから僕の個人的な理由で何かを捻じ曲げることはできない。それはレオにとっての『いい思い出』に瑕疵ができることに他ならない。
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