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どう?
だって僕はマミコから、レオが姫役はマミコで構わないと言っていたと聞いた。だからじゃあそれでいいよ、と僕の中で解決したのだ。僕はレオの考えに任せるから、と。
だけどこれじゃ話が違うじゃないか。
鳥口に一番近いところにいるエミリなら何か知っているんじゃないかと思った。だけどエミリは僕の目線など御構い無しに伏し目で笑うだけだった。
「今更だし、どうこうしようと思う気は無いよ。やりたくない人を無理にやらせることはおかしいことだし」
僕は堪らず横に並んでいる彼の袖を引っ張った。レオが驚いたように僕の方を向く。僕は眉間にしわを寄せて首を横に振った。
言ってない。僕は言ってないぞ。やりたくないなんて、一言も言ってない。
言ってないんだけど。
「……どういうこと?」
レオは僕ではなく、エミリにそう言った。
僕に言って欲しかった。ねえ。僕じゃダメなの? 僕では君と会話できない?
なんでそんなに頑なに僕を避ける?
僕は、結果として確かに君を傷つけたかもしれない。でも僕はこんな一言でさえも君と話すことが難しいほどに君を傷つけてしまったのか。本当は僕が君を傷つけたんじゃないのにって言い訳が頭を過ぎった。そんなこと思ったって結果は変わらないし、そもそも喋れない。でも悲しい。
「やりたくないなんて一言も言ってない、って伝えたいんじゃないかしら」
エミリが僕の気持ちを代弁するように言った。
その通りだエミリ最高。悲しいけど、ありがとう。
「でも俺は確かにマミコから……ルカは姫役をやりたくない、って聞いた……」
空間に微妙な空気が流れた。レオは僕をはっきりと見た。本当に久しぶりに注がれるレオの視線にドギマギしながら、僕はレオの目を見つめ返す。僕は嘘なんて言ってない。
雪だるまも壊してない。手紙も読まずに食べてない……ちゃんと受け取った。お返事だって……書いたのに……!
僕はどうしてか目がうるうるしてしまった。お願い、分かってよ……。
どうしたら分かってくれるか、考えて思いついた。手紙。受け取ったと伝えればいいんだ。僕はレオにもらった三通の手紙を、ずっとブレザーの内ポケットに入れている。それを見せればいい。僕は自分の内ポケットに手を伸ばした。
家庭科準備室の扉が勢いよく開く。
「見て! レオくん、どう?」
鳥口が僕たちの作ったドレスを纏って登場した。
彼女は僕たちの方へやってくると、その場でぐるっと一回転して見せた。
「どう? 素敵でしょ」
サイズぴったり。丈もパンプスに合わせれば完璧。ほつれなどパッと見なし。
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