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ずっとずっと

 ブラウスとズボンを着たレオがいた。それだけでもう大分かっこいい。僕は大きく深呼吸をした。これなら後は僕も手伝える。  僕はかっこいいと言う代わりにレオに向かって歪な笑顔を向ける。  椅子を勧めて座らせた後に、黒色のハイソックスを差し出した。彼が靴下を履いている間にスカーフを巻く用意をする。  座っている彼へ近づいて、恐る恐るスカーフを巻いた。慎重に、彼が美しい身なりになるように丁寧に巻いた。  レオが僕を見つめている。僕は少し余裕ができたので彼の視線に微笑み返す。そうするとレオは見つめあっていた瞳を泳がせて逸らすんだった。何か言いたいことがあることは明白だった。僕はその内容について知らないし知りたくもない。  僕には伝えたいことが山ほどあるが、伝えるすべがない。  丈の短い新緑のコートを着せて、その上に長くて裏地がベルベットの高級そうなペリイスのマントを羽織った。肩の半分だけ出てる騎士とか王子が着てるようなマントだ。紐を綺麗に結んで、ダークブラウンのロングブウツを履く。完成。僕は二、三歩彼から距離を取って眺めた。  美しい。カッコいい。上から下まで僕が手がけた衣装。  ペリイスも姫に負けないくらいの長くて綺麗ないドレープが流れている。  何よりこれを着こなすレオは、僕が今まで出会ったどんな人よりも王子様だった。  僕は女子のように口元に手を当てて少し飛び跳ねてしまった。それ以上に気持ちを表現する方法が見つからなかったのだ。  彼に近づいて笑顔でこくこく頷いたが、レオは少し微笑するだけだった。 「素敵な衣装だ。ありがとう……」  もっと笑って欲しいのに。僕が手がけた衣装では、彼を笑顔にすることはできない。 「……ねえルカ」  革風の白い手袋を渡そうとしたら、小さな声でレオが僕の名前を呼んだ。  僕は彼を見上げる。彼は僕の腰を引いた。まるで逃さない、とでも言うようだった。 「……今朝、あの花壇で……あなたが手に持っていたものって、なに?」  彼は慎重な手つきで僕の顎を掴んで顔を持ち上げる。 「……雪だるまも増えていた。あなたが作り直したの? だとしたらどうして?」  僕は今すぐ彼の胸に寄りかかりたいと思わずにはいられない。さっき感じていた激しいドキドキが艶っぽさをともなって、呼吸するようにトクトクと響いていた。 「あなたは本当に一人が好きなの?」  僕は首を縦にも横にも振れずに戸惑う。 「今朝見たルカは今までで一番寂しそう、だった」  一人は好きだよ。でも寂しいよ。今朝だけじゃないよ。  僕は昨日も一昨日もその前も、ずっとずっと寂しかったよ。  

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