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今ならなんでも伝えられる気がした。

 照れたように目に涙を浮かべて笑う彼を見た。  レオ。 「レオ」  僕も君が大好き。 「僕も君が大好き」  ……? 「大好きだよ、ずっと好きだったよ。ごめんね……! 君をたくさん傷つけてごめんね。レオ。手紙嬉しかったよ。全部読んだよ、何回も読んだよ。ありがとう。レオが僕にくれた言葉全部宝物だよ。ずっと大切にするよ。ひらがなも、片仮名も、漢字も、一生懸命書いてくれたのがすごく伝わった。君が書いているところが目に浮かぶようだった、可愛いなって思った」  なんかいつもと違う感じがした。  でもそんなことに構っている余裕はない。  言葉が濁流のように流れ出てくる。  僕はそれを必死で形にした。 「君が鳥口とキスするところ見たくなくてそれで逃げたんだ、だから大丈夫だから、ごめんね……衣装すごく似合ってたよ、作った甲斐があったってすごく思った……! でもレオは嫌いだったかな、浮かない顔してたから……本当の王子様みたいで……素敵だったけど……」  今ならなんでも伝えられる気がした。 「それから、僕は……一人が好き。僕は喋れないから……一人でいた方が楽なんだ。会話しなくていいでしょ。最初から一人だったら寂しくもないし……だから一人は好き。だけど……でも一人でいるよりレオといる方がずっと好きだと思った。楽しかった。僕、レオと会って初めて一人が寂しかったんだと分かった、あと……それから、それからね……!」 「もっとゆっくり喋っていいよ、全部聞くから」  レオが僕の手を握り返して微笑んだ。 「でも止まらないんだ、なんか、不思議なんだよ、言葉が……なんか喋ってるみたいで、レオに気持ちが届いてるみたいでおかしいんだよ、今伝えないと……もう一生伝えられないかもしれないって思う」 「全部伝わっているよ」 「本当かな……僕は、声が出ないから……どこまで伝わっているかいつも不安でもどかしくて……」 「全部聞こえてるよ……!」  彼が困ったような顔をして泣いた。  

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