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うん
「レオ、大丈夫? 僕なにか変なことしたかな……手、痛かったのかな……レオ、泣かないで、どうしよう……」
「大丈夫だよ」
嬉しくて、と彼は言った。
何が嬉しいの?
「何が嬉しいの?」
レオは泣きながら笑った。晴れ間に雨が降っているみたいだ。空には虹がかかっているみたいだ。僕をぎゅっと抱きしめて耳元で笑う。
「あなたの魔法が解けたみたい」
彼の掠れた声が囁く。
「え……?」
「思っていたより……ずっとずっと……素敵な声だった」
言っている意味が分からなかった。
でもレオが幸せそうだったから、僕はそれでいいかなって思う。
レオがもう一度言って、と僕に言う。
間近にある彼の顔を覗き込み、首を傾げた。
「……もう一回好きって言って」
言う?
いや僕は、声が出ない。
「言って……あ、やっぱり『好き』じゃなくて『大好き』がいい!」
なにそれ、おかしい。
「大好き」
「俺も大好き」
頬にキスされた。
あれ?
「あれ?」
僕……。
「僕」
喋ってる?
「喋ってる?」
うん、とレオが言った。
「……僕喋ってる……!」
うん、とまたレオが言った。
「レオ、僕……っ!」
彼の肩を掴んで言った。
僕は……僕はもし喋ることができたなら、一番に言いたい言葉があったんだ。これを真っ先に伝えたかったんだ。
「レオのこと、大好きなんだよ……!」
うん、と彼は笑った。
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