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「いってきます」

 数秒躊躇って扉を開ける。  冬の晴れ間の光と一緒にリビングが開けた。伯父さんと伯母さんがゆっくりと朝の準備をしている。コーヒーの匂いを感じていると、エプロンをかけた伯母さんと目が合った。  僕は少しはにかんで口を開く。 「……おはようございます」  伯母の目が大きくなった。伯父さんも僕の方を振り向く。  僕は二人に笑った。 「……いってきます」  答えを待たないで扉を閉めてそそくさと玄関に向かってブーツを履いた。  動悸を押さえつけて玄関の扉を開けた瞬間、後ろの方から声が聞こえる。 「流歌くん、いってらっしゃい」  開け放たれた扉の向こうで伯母さんが僕に言う。伯父さんも手を振ってくれた。  僕は手を振って玄関の扉を閉める。  まだ心臓がばくばくしている。だけどとても……嬉しかった。  朝の道路はやっぱりまっさらな雪の絨毯で覆われている。僕は弾む気持ちを我慢できずに綺麗な雪を踏みながら歩いた。空気が気持ちいい。冷たくて、心地がいい。  昨日連絡が来た時間通りに通学路の曲がり角に行くと、レオが立っている。レオは僕を認めると手を振ってくれた。僕は急いで彼の元に駆け寄る。そうしたら彼の三メートル手前くらいで盛大に転んだ。 「ルカ!」  レオの驚いた声がだんだん近くなっていく。  僕は思わず吹き出した。だっさ。雪がクッションになっていたので全然痛くない。  あはは、と一人で笑いながら手と足をバタバタさせる。  血相を変えて怪我はない? と僕を心配してくれている彼におはよう、と言う。 「見て」  起き上がって自分が転んだ跡を指差した。 「天使」 「ばか」  レオは呆れたように笑った。手を差し出してくれたので、僕はその手を素直に取る。彼は僕の服についた雪を払ってくれる。歩き始めたけれど、僕が作った天使をちゃんと踏まずに通り過ぎてくれた。好き。 「今日初めて納豆を食べたよ」  レオが唐突に言う。  僕はそうなんだ、と彼の言葉の続きを促す。 「美味しかった?」  レオは渋い顔をした。

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