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先輩 5

 家庭教師のバイトを休んでも、ベッドに寝転びながら、スマホを操作して裕二くんの写真を眺める。笑った顔も、やらしい姿も、少しむくれた顔も、俺は大好き。三日彼に触らないだけで寂しくなる。やっぱり行けば良かったかなと思っていると裕二くんからLINEのメッセージが届いた。 〈お母さんが、先生におかゆ作って持って行ってあげたらって言ってる〉 (持ってきてくれたら、おかゆそっちのけで君のこと食べそう…なーんて)  本当に裕二くんが来たら、俺は絶対止まらなくなって、帰せなくなりそう。今日だって、多分彼が声を抑えることが出来なくなるほどにめちゃくちゃに抱いてしまいそうだから休んでいるのに。   (次の家庭教師の時告白しようかな…でも、本当に受け入れてくれるのか? それに俺が思ったよりも大人じゃないって知られて幻滅されたりしたら……)  だんだん自分がどうするべきなのか分からなくなってくる。先輩と話していた時は気持ちが盛り上がっていたが、冷静に考えるとやっぱり怖い。 (先輩はこんな怖いことを、俺に二回もしてくれたのか…やっぱり先輩は凄い。そしてやっぱり俺は情けない…)    何だか疲れてきた。考えることを色々放棄して目を閉じると、またピコンと電子音がした。裕二くんかなと確認すると、それは三日ぶりの晶先輩からのメッセージだった。 〈確か今日はあの子の家庭教師の日って言ってたよね? 俺、優しい先輩だから協力してあげる。あとは頑張って〉 「何が……?」 〈意味がわかりません〉とだけ返信すると〈うまくいかなかったらごめんね。あと、達哉はもっと自分の気持ち言った方がいいよ〉というメッセージと笑った顔のスタンプが送られてきた。  まったく意味はわからないが、とりあえず先輩が面白がってるのだけわかる。俺はまた思考が停止してきたのでスマホを放り投げて少し寝ることにした。  どのくらい眠っていたかわからないが、ピンポーンとインターホンが鳴る音で目が覚めた。時計は十九時。外はいつのまにか雨が降り出している。結局まだ一時間しか寝れてない。何か宅配便でも頼んでたっけ。ぼんやりした頭でドアを開けると、髪の毛を濡らした裕二くんが子犬みたいな顔で立っている。  夢かな? そういや寝る前におかゆがどうとかそんなLINEが来ていた気がする。俺は視線を彼の手に移すが、そこにはタッパーも何もなく、スマホが握られているだけ。 「先生、何でLINE返してくんないんだよ。俺何回も送ったのに…電話だって……」  視線を彼の顔に戻すと、泣きそうな顔の裕二くん。どうやら夢ではなさそうだ。何か急用だったのだろうか。インターホンで目が覚めたから、スマホを確認できてない。 「ごめん、ちょっと寝てたから。っていうか傘は? とりあえず部屋入って」  彼をドアの内側に引き寄せると、裕二くんはそのまま俺に抱きついてきた。冷たい身体と水滴がついた髪の毛が触れて、寝ぼけていた頭が一気に冴えた。

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