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先輩 6

「裕二くん、どうしたの」 「なぁ、俺他の人とセックスしちゃ嫌だって言ったよな?」  ギクッと心臓が跳ねる。いや、セックスはやってないけど先輩とキスしたことが過ぎってしまった。どうしてバレたんだ? 「セックスしてないよ」 「嘘。akiさんのインスタにベッドで二人で写ってたじゃん。akiさんと先生、付き合ってるって本当?」  インスタ? 俺が寝ている間に何が起こったんだ?  「ほら、さっき上がった写真。なぁ、先生は土曜にakiさんとセックスしちゃったのかよ……俺、嫌だって…言ったのに……俺以外としないって約束したじゃん!」  ヒートアップする裕二くんは俺にスマホの画面を見せる。そこには土曜日にこの部屋で二人で撮った写真。〝土曜日はダーリンとラブラブだったよ〜♡〟なんて文章も一緒に載せられている。それを見た瞬間、さっきの先輩からのLINEを思い出して項垂れた。先輩がメインだから俺は顎しか写ってないが、知ってる人が見れば、俺の部屋で俺本人だということはわかる。 「俺とはまだ練習で、akiさんとは本番なの? なぁ先生!」 「あの、裕二くん落ち着いて……」  彼は俺をキッと睨み、スマホをタップした。  ‪──裕二くん、君の事好き。君以外抱かない。  彼のスマホから流れてきたのは、以前俺が彼に言った言葉で、前セックスした時に彼がこっそり録音した音声だ。 「先生の嘘つき……俺以外とやらないって言ったのに、なんで約束破っちゃうんだよ! 俺は先生のものなんだから、先生も俺のもんじゃん!」  熱を持った裕二くんの言葉。身体がビリビリとするほどに俺の心に届く。  ‪──先生も俺のもんじゃん。  目から鱗が落ちた気がした。自分がいかに独りよがりで、彼の気持ちを汲み取っていなかったことを知らされた気がした。 「俺は先生のもの」と言われた時も、セックスの時も、彼は受け入れる側だと無意識に思っていた。でも、違う。彼も男なのだ。彼の中では俺が受け入れる側で、俺はとっくに裕二くんのものにされていた。 「ううっ…せんせぇ…やだ、やだよ……先生は俺とだけセックスしなきゃ嫌だ…他の人になんかあげねーもん……たつやせんせぇは俺のだもん……俺は練習じゃなくて本気でしてるのに…ううっ…いやだぁ…」  俺を抱きしめて泣き噦る裕二くん。とっても可愛くて、愛おしい。と同時になんだか自分のことが恥ずかしくなった。彼はこんなに俺のことが好きだって言っていたのに、いつか離れるのが怖くてちゃんと伝えてあげなかっただなんて。  まだ恋すら知らなかった高校一年生の子が、俺なんかをずっと好きでいるはずがないと思い込んでいた。でもいつのまにか彼は俺に本気で恋をしてくれていた。こんな自分勝手な俺に。 「うん…俺も君とのセックスが本気。だから他の人と…先輩とはセックスしてないよ」 「本当に……? キスもダメだからな」  裕二くんはズビッと鼻をすすりながら、俺を不信な目で見る。 「ごめん、キスはしちゃった……」 「もぉ〜……何でしちゃうんだよ……達哉先生のばかぁ……」  彼の目からまた涙が伝い、俺の肩へと顔を埋める。頭を撫でて、ごめんねもうしないよ、となだめても彼は中々顔をあげてくれない。 「どうしたら許してくれる? 先生、裕二くんに許してもらえないと困っちゃうよ」  少しだけ見えてる頬や耳にチュッとキスをしてなだめ続ける。しばらくその行為を続けていると、目を真っ赤にした裕二くんがやっと顔をあげてくれた。 「……俺といっぱいキスして、いっぱいセックスしてくんなきゃ許さない。練習じゃないよ、本気のやつ…」  ‪──本当の自分なんて、見せなくていいと思っていた。だけど今は違う。裕二くんには知ってほしい。俺が彼を好きなこと、独占したいってこと。 「裕二くんはセックスするだけでいいの?」 「どういう意味……?」 「俺はそれだけじゃ足りない。もっともっと裕二くんと繋がっていたい。俺、君のことが好きでしょうがないよ……付き合って欲しい」 「先生が、俺と付き合う……?」  彼の綺麗な目が丸く見開いて、赤くなった目にまた雫が満ちる。だけど返事はすぐに出てこないようで、彼の目から雫が綺麗に流れ落ちた。 「……やっぱり他の人とキスする俺なんか、裕二くんは信用出来ないよな…ほんとごめん、急にこんなこと言って……」 「そんなの……」  裕二くんの形の良い唇が動き出す。そしてその後「オッケーするに決まってるじゃん!」と彼の大きな声が玄関に響いた。 「うぅ……せんせぇ、俺も好き…家庭教師だけじゃなくて、もっともっと会いたい…俺も先生が恋人になって欲しい…」  その言葉に嬉しくなってすぐさま抱きしめた。ああ、泣かないで。そう思ってまた強く身体を抱きしめると、彼も同じ力で俺を抱きしめてくれた。 「うん…俺も。裕二くんにもっと会いたいし、こうやって抱きしめたい。裕二くんのこと、大好き」 「俺のが大好きだし……もう絶対他の人のとこ行かないでよ……」 「うん…行かない。裕二くん以外のとこ行かないようにもっと俺のこと抱きしめてくれる?」 「抱きしめるだけじゃ足んねーよ……先生のおちんちん挿れてくんなきゃ許さない…」 「そんなこと言っていいの? もう嫌だって言ってもやめてあげないよ」 「そんなの言うわけねーじゃん……せんせぇ…俺にいっぱいおちんちん挿れて……達哉先生と練習じゃないセックス、沢山したい……」  涙目の裕二くんがそう言って俺に激しくキスをする。悲しませてごめんね。でもこれからは沢山抱きしめるから、また俺だけに可愛い顔を見せて。君が不安にならないように、沢山言葉と態度で示すから。  雨に濡れた冷たい裕二くんの身体。それを温めるように、何度も彼を強く抱きしめた。

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