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第12話

心臓がありえないほどどくどくと早鐘を打ち、冷や汗かプールの水かわからないものがこめかみを伝っていく。 バレてしまっただろうか。 プールでいやらしい事をしていることが。 勢いとはいえこんな所でシてしまった事を後悔するが、今更もう遅い。 どうしよう…どうすれば… すがるように永瀬に眼差しを向けると、彼は唇に人差し指を当て、里都に静かにするよう命じてきた。 永瀬の思惑はわからないが、今の里都は言われた通りにするしかない。 里都は小さく頷くと唇を噛みしめた。 「ここにいます」 永瀬はいつも里都を指導する時の爽やかな声で、里都の背後にいる人物に返事をした。 「あぁ、永瀬さん、レッスン中すみません。明日なんですけど、プールの使用時間が変更して…」 どうやら声の主はここのスタッフらしい。 そして幸運なことに里都の背中がちょうど壁のようになって、何をしていたのかは見えていなかったようだ。 もしも里都と永瀬のしていたことが見えていたら、こんな風に普通に話しかけられないはず。 バレていないことがわかり、里都はホッと胸をなで下ろす。 しかし、安心していたのも束の間だった。 永瀬が里都の後孔につぷりと指を差し込んできたのだ。 「…っっ…っ!!」 思わず声が漏れそうになり、里都は慌てて唇を噛み締めて声を堪えた。 見えていないとはいえそんな事をしたら直ぐにバレてしまう。 里都は我慢強い方ではないのだ。 「やめて」 里都は眼差しだけで必死に訴えた。 しかし永瀬は平然とした表情のまま、奥へ、奥へと指を進めてくる。 先ほど舌で散々(ねぶ)られていたそこは、里都の思考とは裏腹に永瀬の指をすんなりと迎え入れてしまった。 「……んっ…っっ」 だめ、だめ…だめ… そう思えば思うほど、身体は余計に感じてしまう。 それならば、と里都は思い切り力んだ。 そこから指を吐き出してしまえば、感じずにすむかもしれないと思ったからだ。 しかし、それがかえって自らの肉路を切り開いてしまうことになってしまった。 力んだことにより肉襞がうねり、吐き出すどころか永瀬の指を奥へと招き入れてしまったのだ。 里都の後孔には永瀬の中指が根元までずっぷりと埋まり、剥き出しにされた陰茎の先端からは透明な汁がダラダラと垂れている。 視覚と触覚、両方から襲う強烈な刺激になすすべもなく、里都は腰がビクビクと跳ね上がるのを押さえつけるのに精一杯だった。 「……わかりました、それで大丈夫です」 しばらくやりとりをしていたスタッフと永瀬の会話に、ようやく終わりが見えてきた。 内側でグリグリと捻られる指に息絶え絶えになりながら、里都は早く背後にいる人物が立ち去ってくれる事を願っていた。 「よろしくお願いします。あ、あの……大丈夫ですか?」 「え?」 「そちらの生徒さん、さっきからすごく苦しそうですけど」 心配そうなスタッフの言葉に里都は再び息をのんだ。 ここには生徒は里都しかない。 何をしているか見えていないとはいえ、やはり異変には気づかれていたのだ。 「あぁ、大丈夫ですよ」 永瀬はそう言うと里都をチラリと見上げた。 嫌な予感がする。 「ちょっと頑張りすぎちゃっただけですから。ね?望月さん」 ね?という言葉と同時に、探り当てられた前立腺をグリグリと押し潰された。 「ぁ…っぐっ……っっぅ!!」 里都は悲鳴のような声が出てしまうのを、喉の奥で必死に噛み殺した。 やっぱりダメだ。 こんな気持ちいいの、耐えられない。 声が漏れる。 声だけじゃなく、精液だって漏れそうだ。 イく…イきたい…出したい… 弱い部分を絶妙な加減で刺激され続けて、頭がどんどん真っ白になっていく。 「ほら、返事…ちゃんとしないと」 はぁはぁと浅い呼吸を繰り返していると、永瀬が小声で促してきた。 そうだ、返事…返事をしなくては。 しかし快楽に飲み込まれつつある里都は、もはや何に対しての返事なのかもわかっていなかった。 「は、…ぁ…は…いっっ」 「そうですか?じゃあ、あと戸締りお願いしますね」 背後から気配が消え、プールは再び里都と永瀬だけになった。 涙と汗とでぐちゃぐちゃになった里都を見上げると、永瀬はにこりと笑った。 「よく耐えましたね。ね、望月さんってちょっとマゾっ気あったりします?」 「ひっ…あ、あっ…わ、わかんな…っ」 「無自覚かぁ。もったいないなぁ。今まで旦那さんとどんなヌルいセックスしてたんです?」 ズルリと指が引き抜かれた。 永瀬は濡れた中指を見つめると、里都に見せつけるように自分の口の中に含んだ。 舌が唇が、里都の分泌液を味わっている。 その卑猥すぎる行為から、永瀬から目が離せなくなる。 この男とのセックスは危険だ。 そこで初めて本能が警鐘を鳴らしてきた。 一度きりで終わるなんてとんでもない。 このまま最後までしてしまったら、きっと一生こびりついて離れなくなってしまうだろう。 しかし、今更やめてほしいとはいえない。 もう引き返せないところまできてしまったのだ。 心も、身体も。 「プールの水汚されたら困っちゃうんで、ここは水着の中に仕舞っときましょうね」 永瀬はそう言うと、今にも爆発しそうな里都の陰茎を窮屈な水着の中におさめた。 代わりに里都の身体を後ろ向きにすると、ヒップ側の水着をずるりと引き摺り下ろす。 キュッと引き締まった形のいい双丘のその狭間に押し付けられたのは、一際熱く硬く太い肉の塊だった。 「今日からこっちのレッスンも並行して頑張りましょうね。大丈夫です、望月さんすごく真面目だしヤル気あるから、きっとレッスンも頑張れると思いますよ、ね?」 耳の穴に舌をねじ込まれながら囁かれた言葉が、毒のように身体に染み渡っていく感覚がする。 その毒は、里都の尻の割れ目を上下する永瀬の雄茎のことしか考えられなくさせる甘い、甘い毒だった。 「は…はいっ…っ」 里都は振り向くと、まるで人が変わったようにだらしのない表情でへらりと笑った。 「それじゃあ、なんて言うんですか?」 「きょ…今日からここにいっぱいし、指導…よ、よろしくお願いします…」 里都はそう言うと、永瀬に向かって尻を割って見せたのだった。

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