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ずっと君だけを(5)

あぁもうダメだ。彼が息を吸い込んだのが分かる。 何かを言ってしまう。その何かを言ってしまえば、もう、設定だけじゃ済まされなくなるのに。その後どうなるのか、浩ちゃんは何も分かっていない。 ……言っちゃダメだよ。何も言っちゃいけない。困るのは、浩ちゃんなんだから。 「永遠は俺のなんだから。誰がやるかよ」 「……っ、」 大きな声だった。 もともと良い声をしているのに、そんな大きな声で言うなんて……。 ただ見ていただけで状況がいまいち分かっていなかった人にも、何が起こってるのかバレてしまう。 浩ちゃんのばか。 本当に何も分かってない。 「浩ちゃ……」 彼に迷惑をかけてしまうことが、たまらなく怖い。付き合っていることがバレて、白い目で見られるとか、そういうことが問題なんじゃないんだ。このクラスだもの。絶対にみんな軽蔑したりはしない。 「浩ちゃん、わりい。冗談だから」 「俺の奥さんって言ったの、お前じゃん。勝手に触るんじゃねぇよ」 「だから、悪かったって。……てか、お前らさぁ、くっついたなら早く言えよ。俺らがどんな思いで毎日見てたか分かるか? ……っとに、遅すぎ」 “でも良かったー” “永遠、やっとだね” 「……っ、」 思った通り、みんながわいわい騒いでお祝いしてくれている。 だけど俺は、どうしようもないくらいに胸が痛くて、浩ちゃんの制服をぎゅうっと握り締めた。

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