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今度は俺の番(2)

何かと理由を付けては俺の家へとやってくる里田から、俺はもう逃げることもできない。こっそり引っ越しをすればいいのかもしれないが、そうしたところでまたどこからか情報を得てまたこうやって家に来そうだし、第一そんな金も時間もただの学生の俺にはない。 一体何の嫌がらせなのか。俺のことが好きで、仲良くしたくてこんなことしているとは思えない。何のためにこうしてわざわざやって来るのか。里田はどれだけ暇してるんだ。 コホンと、大きく咳払いをした。歩く歩幅も足音も大きくする。それに気づき、うずくまっていた里田が顔を上げた。 「また来たのかよ」 「ねぇ、涼くん。今日の誕生日もどうせ一人でしょ? 僕がお祝いしてあげる」 「……いらねぇ」 「来ちゃダメだった? ……って、そんなわけないよね。毎年君は一人なんだもの。君の誕生日を祝ってくれる奴なんか誰もいないよ。優しい優しい僕だけ。ね、お家に入れて。お酒、買ってきたからさ」 バイトを終え、帰宅した今の時間は夜の10時。ただでさえ暗いのに、階段も廊下も電気が切れかけているし、里田の表情は少し長めの前髪で目元が隠されているから分かりにくい。どんな顔をしてその言葉を口にしてる? 「頼んでもねぇのに、よくもまぁ毎回こうして来るよなぁ。ほんっと、昔からお前のこと理解できねぇわ」 「別に理解しなくてもいいけど?」 「はぁ。俺も理解したくはないけどさ、こうしてお祝いなのか嫌がらせなのか分からないこの状況の意味を知るために、少しくらい理解したいと思ってしまうんだよ。分からないとなかなかに気持ち悪いぜ? この謎の状況は」

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