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今度は俺の番(6)
「そういうこと言ったりして……、俺はお前の全てが気に入らない」
「でも、涼くんのお誕生日のお祝い、してくれるのは僕だけでしょう?」
服を掴んだまま、里田も立ち上がった。意地でも離さないと、そう言っているみたいだ。何だコイツ。冷蔵庫までついて来る気なわけ?……かと思ったらそうではないらしく、机に置いていた俺の家の鍵を手に取った。
「僕、唐揚げとポテトが食べたくなったから、一緒にコンビニに買いに行こう」
「は? 一人で行けよ。そしてそのまま帰ってくるな」
鍵は置いて行けと、里田から取り上げると、鍵を取り返すわけでもなくまた俺の服を掴んだ。片手で掴まれている時も引き剥がせなかったのに、両手で掴まれてしまったら終わりだ。
「里田、お前いい加減にしろよ」
「涼くん、お誕生日おめでとう」
「……なんで、今このタイミングでそれ言うわけ?」
「帰りたくないから、」
「そんなこと言えば俺がここにいていいよって、そう言うとでも?」
「涼くんと一緒にいたい」
ぽすっと、里田が俺の胸に顔を埋めた。服を掴んでいた手が一瞬だけ離れ、その隙に押しのけようと思ったのに、思った時にはその手がもう背中に回されていた。身長は俺の頭一つ分小さい上に筋肉もあまりないその細い体は、俺が抱きしめ返せばすっぽりと収まってしまうだろう。……絶対にやらないけれど。
「涼くん、」
「……っ、」
「涼くん、」
「分かったよ。一緒に買いに行くし、今日は家にいていいから」
「……涼くん、おめでと」
「はいはい」
俺の胸に埋められた里田の顔なんか見えるはずもないのに、でもどうしてか、あの嫌いじゃない顔で笑っているような気がした。
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