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今度は俺の番(8)
「はぁ~……」
片手で数えられる回数を超えたところで、俺は息を吐くのをやめた。分かってる。これが面白くてやっているんじゃないって。何かしていないと、里田のことを考えてしまうからだって。
「はぁ、」
基本的には突然俺の家にやって来る里田だけど、俺の誕生日とクリスマスのような何かイベントの時だけは来るのが確実に分かっている。去年も一昨年も家に来て、仕方なくだとしても里田と一緒に過ごした。チキンを食べるとかケーキを食べるとか、そういうクリスマスらしいことは一切なしに、ゴタゴタと言い合いしながらも酒を飲むだけ。だから気分の良いものではない。
それでも毎年そうなれば、里田とクリスマスを過ごさないことに違和感を持つし、里田だって今年だけ来ないなんてこともないはずだ。アイツの中ではクリスマスは俺と過ごすって、その選択肢しか存在していないに決まっている。
本人に聞いたわけでもないのに、そう思うだけの自信がある。
「はぁ、」
約束があるからと、先輩の誘いを断れば良かっただろうか。
「……って、何で俺がアイツを気にかけなきゃいけないわけ? おかしいだろ、」
約束をしているわけじゃない。 俺の都合なんてお構い無しに、アイツが勝手に俺の家に来ているだけ。俺だってあの頃みたいに、いつも一人なわけじゃない。
「お待たせー」
そんなことをぐるぐると考えていると、ガチャリとドアが開いて先輩3人が顔を出した。
「涼、行こうぜ」
「はい、」
もう一度息を吐いて、俺はポケットに手を入れたまま先輩の後へと続いた。
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