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今度は俺の番(10)

いつも、いつも、里田に振り回されてばっかりで、迷惑しているって言うのに。どうして俺が、里田を少しでも気にして、心配して、自分を責めなくちゃいけないんだ? 「涼くん、お帰り、」 「お帰り? ふざけるな。何でここにいるんだよ。こんな時間まで俺を待ってるとか、頭おかしいだろ。お前、ほんっと困る。意味分かんねぇ」 いつもなら真っ先に嫌みを口にする里田の口は、紫色になっていて震えている。寒い中、バカみたいにずっと外にいたのだから当たり前だ。 電気、どうして今日取り替えたんだろう。見たくなかったものまで見えてしまう。……里田の目の下の、涙の痕。俺が帰って来ないから、寂しくて泣いてた? なぁ、里田。お前は何がしたいの? だってこれじゃあさ、俺への嫌がらせじゃなくて、まるで、俺のこと……。 「……ねぇ、涼くん。クリスマスを、一緒に過ごす人が見つかったの?」 「里田、」 「今日は、珍しくケーキも買ってきたのになぁ」 そう言った里田の顔が、くしゃりと歪んだ。唇を噛みしめ涙をこらえているけれど、我慢できずに泣き出してしまったようだ。ボロボロと涙が溢れ、俺が帰って来た時には既にあったその痕を上書きしていく。そして俺に泣き顔を見られないようになのか、両手で覆った後に小さくうずくまった。 里田が泣いている。俺の帰りを待ちながら、何を考えていたの? 今は、何を思って泣いているの?   「……っ、」

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