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今度は俺の番(12)

「……そうだね。僕が勝手に、来てただけ。今年も一緒にクリスマスを、君と過ごしたくて、僕が、勝手に、」 「……っ、」 酷い泣き顔を望んだのに、いざ見たら胸が痛むだけだった。泣き顔、好きじゃない。あの顔が見たい。たまに見せてくれてた、ふわりと優しく笑う、あの顔が。 「なぁ、里田。お前って、俺のこと好き?」 里田の前に座り込み、里田の頬に手を当てた。さっきまでポケットに入れていたから温かいはず。里田はすりすりと頬を寄せ、自分の手をその上から重ねた。 小さくて、冷たくて、震えている里田の手に、また心が痛くなる。 「なぁ、俺のこと好き?」 里田の目にキスを落とし、溢れ出る涙を舐め上げた。びくりと驚いた反応を見せ、思わず俺から少し引いた里田の腕を掴み、自分の腕の中に引き寄せる。 里田はしばらく固まったままだったけれど、そのうちゆっくりと俺の背中へ手を回した。ぎゅうっと服が掴まれた時、もう一度尋ねた。俺のこと、好き? って。 「涼くん、」 「ん?」 「……好き、だよ。涼くんのこと、最初からずっと好きだった」 「そっか、」 俺は、試したかったのかもしれない。里田がずっと俺を待っているのをどこかで期待してたんだ。そうして今、嫌いだったはずの里田に好きと言われたのに、ちっとも嫌な気がしない。心のどこかでこうなることを望んでいた自分がいたと、そう認めなければ、ずっと里田を拒否できずに受け入れてきた自分の言動を説明できない。

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