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静電気(3)
「なぁ、」
「ん?」
「あのさ……」
帰り道、久し振りに一緒に帰るせいか妙に緊張していて。話すことが何も浮かばず無言で歩いていると、永倉がいきなり話を切り出した。
もごもご言って、僕と目も合わせずに。
「……っ」
なんとなく嫌な予感がする。僕も永倉から目を逸らし、一歩分離れてみた。だって静電気、怖いもの。
けれど、それっきり永倉が黙り込んでしまった。しばらくしても何も言って来ないから、どれだけダメージの大きい静電気を作る気だと怖くなり、びくびくしながら永倉の方を見た瞬間、左胸あたりに小さな箱を押しつけられた。
「誕生日、おめでとう」
「え、」
「と、時計買ったんだよ。俺と同じの。だから、最近バイトでお前と帰れなくて、」
ん、と再び、でも今度はもっと強くその箱を押しつけられる。よく分からないままその箱を受け取って永倉を見つめ直せば、永倉はまた俺から目を逸らした。
それから割と大きな声で一言。
「好きだ」
聞き間違いではない確かに聞こえたその言葉に、僕の視界がゆらゆらしていく。
やっぱり永倉のことが好きでたまらないと改めて感じ、プレゼントの箱を優しく抱きしめてみると、目に溜まっていた涙がぽたぽたと落ちていった。
「……僕のこと、好きなの?」
「うん」
「静電気、もう来ない?」
「え?」
「バチッって来ない?痛みもない?」
「ちょ、意味分かんない」
「静電気、いや、だ、よ」
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