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愛の代償(1)
この世で愛すべきものは、神である。深く信仰し、愛の限りを尽くさねばならない。私たちに真実の愛をくださるのは神しかおらず、神に全てを捧げた者こそがその愛を与えられる。神の愛により我々の命が生かされ、日々を幸せに生きられるのだ。
だから私は、私の全てを神に捧げようと誓った。他には何も望まないから、ただ一つ、神からの愛が欲しいのだと。それだけでいい。そしてそのために、神に求められるままに生き、ひたむきに尽くすのだと。
……そう誓ったというのに。
「こっちにおいで」
「でも、」
「こんな寒い夜は、寄り添って寝た方が温かい。ね?」
「……はい、」
「ふふっ、君は本当に可愛い。早く隣においで」
彼を、愛してしまったのだ。私の全てであり、全てを捧げると誓った神を裏切る行為だと知っても。
神の存在を、尊さを、何もかもを教えてくださった彼を。いつしか、神以上に愛してしまったのだ。
万人に愛を与えてくださる神よりも、ただ一人の聖人と呼ばれたこの男からの愛が欲しい。神ではなく私を、愛して欲しい。この男の温もりも声も匂いも眼差しも、全てを私のものにしてしまいたい。
言葉に出して請うことも態度で示すこともなく、ただただ、ひたすらに心の中で恋うた。
私は死んでも構わない。絶対的な神を、裏切った私なのだから。けれど、たったの一度だけでいいから、私だけに、彼の愛を注いで欲しい。
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