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ふたりの始まり。(3)
それなのに。
「小山ー、また本読んでんの? 俺にも見せて」
俺の大切な本を、大学で知り合った蕪木はいつの間にかそう言って奪っていく。
本に集中している時は、蕪木の気配に気づかない。ふと、気が緩んだその瞬間に、蕪木の匂いに気づき、本を持つ手に力を入れるも、奴はするりと俺の手から本を持って行ってしまうんだ。
何がしたいのかは分からない。理由を問えば、「小山が好きだから、小山の好きなものに興味がある。小山のことをもっと知りたい」と、そう言って笑っている。その好きという言葉にどんな意味が含まれているのかは、蕪木本人にしか分かることではないのだけれど。
……俺のことが好き、とは? 何か好かれるようなことを蕪木にした覚えはないのに?
これが最近の、俺の悩みになっている。
友人になった覚えもない。普段から何か積極的に関わるわけでもない。俺と蕪木との関わりは、俺が読んでいる本が繋いでいるだけ。それも蕪木に無理矢理繋がれていると言った方が正しいだろう。
いつも突然現れては勝手に本を奪っていく。そしてしばらくして、「読んだよ」とそれだけを言ってその本を返してくるのだ。
初めこそは抵抗していたものの、どうせ本は返ってくるのだから激しく反応せず、淡々としていよう。そうすれば蕪木もつまらなくなってちょっかいをかけるのをやめるだろうと思っていた。
けれどそれはどうやら見当違いだったようで。知り合って半年。未だにずっと続いている。
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