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ふたりの始まり。(8)

授業が終わり教室を出ると、廊下には日の光が射し込んでいた。窓から外を眺めれば、青い空が広がっている。こんな日には外に出て、木の下でのんびり本を読むのがいいに決まっている。俺はたまに過ごしているお気に入りの場所へ行くことにした。この時間はあまり人通りがなく、静かに読めるはずだ。 「……っと、誰かいる?」 横たわっている誰かの姿が視界に入ってきた。近づいてみれば、蕪木だった。本を読みながら寝てしまったのだろう。開かれた本は胸元に逆さまに置かれている。 すーすーと柔らな寝息を立て、その寝顔は木漏れ日できらきらして見えた。思わず顔を近づけると、頬にうっすらと涙の痕が見えた。 「……、」 蕪木が奪っていったこの本は、悲哀漂うけれど大きく心を揺さぶられるから大好きなお話で。読む度に色んなことが見えて、月に一度は読み返すんだ。……蕪木も、読んで泣いたんだ。俺と同じ気持ちを抱いてくれたのだろうか。 「ふぅん、」 素直に気になると、そう思った。蕪木の横に腰を下ろし、少しそわそわとした気持ちで鞄の中から本を取り出す。栞を挟んだページを広げながら、横目で蕪木を見た。 「……知りたいのなら、教えてあげる。だけど、俺がここにいる間に目を覚ましたらな、」 見られてもいないのに何だか恥ずかしくなって、俺は蕪木の寝顔を見つつ、口元を本で隠した。 END コーヤさんからいただいたイラストにつけたお話でした!イラストはブログに掲載します。コーヤさん、ありがとうございました。

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