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こんな展開、望んでなかった!(2)
ひそひそと囁かれる名前に、向けられるうっとりとした視線。周が椅子から立ち上がり教室の外へと出れば、さり気なく後を追う者までいる。
「目が合ったの」と語尾にハートが見えるような甘ったるい声を出して、本人に見られているわけでもないのに恥ずかしそうに、所謂萌え袖というやつで口元を隠す女子まで。
ばかじゃあないのか。休み時間まで周のことを見ている暇があるのなら、自分の席に大人しく座って英単語の一つでも覚えろってんだ。と、心の中で文句を吐く俺も、単語帳は開いてるけど、視線は周へと向いている。どうしてこうも周が気になるのか。理由は一つだ。これだけ分かりやすくちやほやされているのに、周がこの状況に興味を示さないからだ。
「周くん、ちょっといいかな」
「何?」
「話したいことがあって……。ここじゃあ言えないから、階段のところに来てくれる?」
隣の席から聞こえる。周と、周のことが好きな女子のやり取り。こうして今日も周は呼び出される。胸元に付けられたバッジの色が赤だから、この人は先輩だ。はいはい、今日は先輩からの告白ですか。
「……ったく、このモテ男野郎」
後輩、同じクラスの女子、他クラスの女子、それから先輩まで。周は毎日のように告白を受けている。いや、さすがに毎日は言い過ぎだけれど、それくらいたくさんの告白を受けている。
それなのに本人ときたら、そうして想いを告げにくる女子には冷たい態度で何の興味も示さない。
告白には付き合うけれど、全員すぱっと振られるらしい。告白した女子が泣いているのを俺もよく見かけるし、これだけたくさんの女子に告白されているのに、いつまで経っても彼女はできないから、本当なのだろう。
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