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こんな展開、望んでなかった!(3)
モテない俺からしたら、周はただの嫌みな奴でしかない。だってそうだろう? これだけモテていれば、嬉しいに決まっている。それなのにすました態度で、何様だ? って腹が立つ。
醜い嫉妬からくるものだけれど、それを認めた上で俺は、周のことが嫌いだ。
「 裕樹 、口開けて」
周のことを思いながら、単語帳を睨みつけていると、誰かに肩を叩かれそんなことを言われた。ぱっと顔を上げれば、目の前には周がいて、そしてその後ろには周を呼び出しに来た先輩がいる。
……は?
今から、階段の所で告白されに行くんだろう?
どうして周はその前に俺の所に来て、俺に口を開けるように言うんだ?
「いやー、意味分からないんですけど?」
「いいから開けろって。いい物やるから」
「やだ。何入れる気だよ」
絶対に口を開けないと、きつく口を閉じると、周は俺の唇へと何かを押しつけた。ふわりと香る苺の匂い。……飴?
思わず少し口を開けると、コロンと音がして甘さがいっぱいに広がった。
周の後ろでそれを見ていた先輩は不思議そうにその光景を見ている。けれど、俺の後ろから周の顔を見ていた女子は叫び声を上げた。
周が、笑ったから。
「さっきもらったんだよ。裕樹って苺の飴好きだろ?」
「……あぁ、うん。ありがと、」
俺の髪をくしゃりと撫で、優しく微笑む。くそう……何なんだこれは。嫌いな周なのに、こういうことしてくる意味の分からないところも嫌いなのに。笑顔を向けられたら、何だか別の感情がわいてくる。気持ちが悪い。触れられた髪も、唇も、熱くて。ああもう何、何なの。頬にも熱が集中するのが分かる。
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