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出来の悪い弟(1)
小学生の頃、九九を習ったのは二年生だけれど、覚えたのは三年生だった。そのせいで、覚えた人だけがもらえるシールを一人だけもらうことができなかった。
発表した自分の意見に「おなじです!」と言ってくれる子は誰もいなかった。先生にもどうしたらそんな答えになるのかと、とにかく怒られることが多かった。
好きな女の子を苛めすぎて泣かせてしまったこともあった。その子の父親はヤクザだった。好きだったからつい苛めてしまった、と言わざるを得なくなり、最悪な形での告白となった。苛めたことを許してもらえただけ良かったけれど。
蹴ったサッカーボールが思った以上に飛んでしまい、校長室の窓ガラスに直撃したこともあった。もちろん割れて校長室にガラスが飛び散った。中にいた校長先生の頭にボールが当たったせいでカツラが飛び、校長先生の頭にもガラスが飛んだ。色んな意味で死ぬほど怒られた。
勉強もできないわ、問題は起こすわで、両親はいつもため息ばかりついていた。そして兄貴は、俺のことを「出来の悪い弟」と呼んだ。冷たい目で見られ、ただただ腹立たしかった。確かに問題はたくさん起こしてしまったけれど、どうして兄貴なんかに「出来の悪い」というレッテルを貼られなければならないのか。
いつか見返してやる。
小学生ながら兄貴に対して、そんなことを思っていた。
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