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特別な一日。(2)
そんなことを考えながら帰る用意をしようと机の中に手を入れた時、何かが手に触れた。……箱? それから、リボン?
「……は?」
取り出して見れば茶色の箱に少し薄めのピンクのリボンが飾られている。これは間違いなくチョコだろ。
義理か本命かどちらにせよ、誰かが間違って俺の机に入れてしまったんじゃ? と一瞬考えたけれどその確率は低いと思い直した。一体誰が間違うっていうんだ。
俺の席は窓側の一番後ろなんですけど。
「え、何これ。本当に俺宛て?」
誰からだ? そう思ってリボンを少し解いたところで手を止めた。これってもしかして、アイツ──水谷宛てなんじゃないか? 俺といつも一緒にいるし、本人は今日、色んな女子からチョコを貰っている。その中で渡しにくいからって俺に託した可能性もある。
例えそうだとしても、俺の机の中にあったのだから、俺が中身を見る権利はあるよな? 机の中にチョコだなんて、いざこんな珍しいことが起こるとどうしたらいいのか分からないや。
するりと完全にリボンを解き、ゆっくりと箱を開けると、小さくたたまれた手紙が入っていた。そっと広げ名前を確認すれば、「駒野くんへ」と俺の名前が書かれていた。
マジで俺宛てかよ。
驚きながら手紙を読み進めると、どうやら本命のようだ。そして最後に書かれていた名前に、ひっと変な声が漏れた。男子が可愛いよなって騒いでる岩橋さんじゃあないか。どうしてそんな人が、俺を……?
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