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特別な一日。(13)
はいはいそうですか、と立ち上がり制服に付いた砂を払った。体当たりして一緒に倒れた水谷はまだ起きあがらない。何してるのって手を伸ばすと、水谷はその手をゆっくり掴んだ。強く引っ張り起こしてやると、立ったのに固まったままで制服についた砂を取ろうともしない。それも俺がやらなきゃいけないのかと、わざと大きくため息をついてみせ、それから何度か叩いてきれいにしてあげた。
「なぁ、駒野」
「なに」
水谷の呼びかけに適当に返事をし、きょろきょろと周りを見渡し、誰もいないことを確認する。校門前で体当たりされて二人とも倒れるだなんてそんな恥ずかしくて謎な光景を見られるのは嫌だから。
良かった、誰もいない。今度はホッと、安心した意味でため息をつくと、水谷が何かぼそりと呟いた。顔を見れば、ものすごく膨れている。水谷が実は、イケメンなのは顔だけで、中身はこんなにお子様だと知ったら女子のファンが少し減るんじゃあないかって笑ったら睨まれた。
「板チョコは、俺しか駒野にチョコをあげない前提だったの」
「ん?」
「……あんな可愛い人からあんな手の込んだチョコ貰ってるの見たら、この安くてボロボロな板チョコをもう一度なんて、なかなか渡せないだろ」
「それも分かってたよ。それでもお前からのチョコを欲しかったんだから仕方ないだろ?」
「分かってて俺に色々言わせようとしたり、させようとしたりするのズルいんじゃねぇ?」
「……ねぇ、水谷。本命チョコなのに、投げただけ? 何か特別な言葉はないの?」
「……ほら、またそうやってズルいこと言う、」
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