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特別な一日。(14)

そんなにズルいことなの? って、顔を覗き込むと、水谷は膨れる余裕もなくなったのか、黙って顔を隠した。 「女子にキャーキャー言われてるイケメン水谷くんが、実はこんなに可愛らしいキャラだったとはね」 「……バカ」 「はいはい」 「はいはい言うな。何かすっげぇムカつく」 「……それで? 言うことは?」 「だからっ、」 ゴニョゴニョと呟く水谷が可愛い。もうそれで許してやればいいのに、どうしても言わせたくて意地悪してしまうのも、全部その水谷の可愛さのせいにした。……それにしてもおかしいよなぁ。俺ってずっと片想いしていたはずなのに、まさかのバレンタインの今日に、こんなことになるんだから。 見た目はともかく、普段から可愛いとは思っていたけれど、照れたらその可愛さがまた何十倍にも大きくなるのだから、俺の心臓はこの先無事なのかな。俺のことズルいって言う水谷も、俺から言わせればズルいことたくさんしてるんだけど。 「水谷、可愛いな」 「今、そういうこと言うなよ。人がせっかく頑張ろうと、」 いい加減隠すのをやめて顔を見せてほしいと、無理矢理手を掴むと、潤んだ瞳が覗いた。 「それで?」 せっかく頑張ろうとしてることを、早く頑張って。ニヤリと笑ってそう言うと、信じられないと大きく目を開いた。興奮して顔を隠していたその手で俺を叩くから、真っ赤な顔が丸見えだ。 「……あぁもうだからっ、何なんだよ。駒野ってこんな意地悪だったのか?」 「意地悪したら、俺のこと嫌いになるの?」 「……ばっか、お前っ。だから、もう……、す、好きだよ……!」

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