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チョコの代わりに、涙味のキス。(4)
「はぁ……? どうして男の俺が、お前にチョコやるんだよ。お前たくさん貰ったじゃん。まだいるの……?」
「や……。自分の本命からチョコ、貰いたいなって、そう思っただけ」
「……え?」
泉が優しく笑ってる。それから、さっき俺の鼻に意地悪をしたその手で、今度は俺の手をそっと握った。そんなの、反則だろ……? 泉の手はとても冷たいのに、触れられたところから熱くなっていく。こっそりと影で繋いだ手。本物は、こんなに温かさをくれるものなんだ。
「いず、み、」
目が合わせられない。目線だけじゃなくて、体ごと全部どこかに消えてしまいたくなる。今すぐこの場から逃げたい。
「栄介、」
「……っ、」
泉の口から出てきた言葉、嫌な言葉じゃなかった。自分の本命から貰いたいからって、それで俺にチョコの話するなんて。こうして優しく笑いかけて、手を握るだなんて。それって、だって、つまり──。
「い、ずみ……、」
「悩んだけど、言いたくて。俺、お前からのチョコが欲しい」
「だ、だって、それ、だって、そ、それは、」
「ぷはっ、栄介落ち着いて」
「落ち着けるわけ、ないだろ……! 泉が、変なこと言うから、俺、もうっ、」
「変なことじゃない。栄介のこと好きって、俺の大切な気持ちだよ」
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