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同じ気持ち(3)

「えっと、僕……! ご、ごめんっ、」 水やりに行かなくちゃと、早見君は僕に背を向けると、今度は机を倒してしまわないように気をつけながら、前のドアから出て行ってしまった。廊下の窓から見た早見君は、泣いてるようで目に手を当てていて。 「え……?」 泣かせてしまったあげく、逃げられてしまったと数秒遅れて気づいた。慌てて後を追いかけて教室を出ると、階段へと向かう。でも、パタパタとスリッパの音がしない。……どこに行った? 階段を下りてはいない。隣の教室……? 「……っ、」 足音がしたらまた彼が逃げてしまいそうだから。僕はスリッパを脱いだ。これなら僕が近づいても気づかないだろう。やっぱり床の冷たさで足の裏が痛いけれど、そんなこと気にしていられなかった。 隣にある教室を窓からこっそり覗く。でも、そこに早見君はいなかった。まぁ、他の教室にチョコを持ったまま入ることはしないだろうな。そして僕は、その教室の横にあるトイレのドアを勢い良く開けた。間違いない、ここにいると、そう思ったから。 「あっ、ひ、日村くん、」 やっぱりいた。 「早見君、みっけ」 ドアを開けるとすぐに、早見君を見つけた。チョコを抱きしめたまま、立っていた。急にドアが開いたことにももちろん、何よりも僕に見つかったことに驚いたんだろう。ポロポロと泣き始めてしまった。さっきみたいに目に手を当てて。チョコの箱に、涙が染みた。

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