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同じ気持ち(4)
「早見君、花の水やりに行くんじゃないの? どうして今度はここにいるの?」
「日村くん、僕、僕は……っ、」
「その手に持ってるチョコは、僕にくれるんだよね? さっき、机の中に入れようとしていたでしょ?」
「ごめっ、ごめんなさい……っ、僕……」
僕は、とても意地悪だ。大好きなのに、早見君を泣かせてしまった。でも、どうしてか嬉しい。彼の涙を初めて見られたからだろうか。初めて見た彼の涙は、僕のせいで流した涙なんて。
「早見君、泣かないで。涙で箱が濡れてるよ」
「も、いい、これ、あげない……から、」
「どうして? 僕にくれるんじゃないの?」
「僕から、って、分かったら、日村くん、気持ち悪い、って、おも、う、でしょ、」
わーっと、とうとう本格的に泣き出してしまった。僕は手に持っていたスリッパを置き、あいた手で早見君を抱きしめた。そして、とんとんと優しく背中を叩く。
「そんなこと、思わないよ。そのチョコほしい。早見君からのチョコが、僕はすごくほしいです」
そう言って、抱きしめる力を強くすると、早見君のふわふわの髪が僕の鼻をくすぐった。いい匂いがする。初めてこうして抱きしめて、ぐんっとまた気持ちが大きくなった。
初めてがトイレは、気に入らないけれど。
「早見君、チョコちょうだい」
「日村、く、ん、」
「僕も、君にチョコ、作ってきた」
「……え?」
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