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嘘? 本当?(3)
忘れていた。今日は四月一日で、エイプリルフールじゃあないか。黒沢と遊べるということだけしか考えていなかったから、すっかり頭から消えていた。覚えていたら何か、面白いイタズラしたのに。黒沢がわっと驚くような、何かすごいことを。
「矢田~。何か変なこと考えただろ? ダメだよ、嘘ついちゃ」
「でもエイプリルフールだから、嘘ついていいんだよ」
「それは午前中までで、午後からは嘘はダメだからね」
「そうなの? ……って、それ嘘でしょ?」
「ほんと、ほんと」
エイプリルフールはもういいから映画館に行こうって、黒沢は俺の肩に手を回し、さっき俺が進もうとしていた道とは反対に歩き出した。
「黒沢、重い」
「嘘はダメだって」
「……だから嘘じゃないってば」
「はいはい」
回された手に、俺のドキドキが伝わってしまいそうで怖い。何気なくそうしているのだろうけど、俺にとってはそんな些細なこともとても大きく感じるんだ。黒沢が俺の顔で遊んだりと変なことをしたせいで少し落ち着いたてきたというのに、またこうして黒沢のせいでドキドキさせられている。
「そういえばさ、矢田はこの二週間ずっとバイトしてたの?」
それなのに黒沢はそんな俺にお構いなしで。俺の顔をのぞき込んでは嬉しそうに笑っている。そんな顔を見られるのは俺だって嬉しいけど、それよりも恥ずかしいが上回るから頬が引きつって笑えない。
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