122 / 230
嘘? 本当?(4)
「……うん、」
「頑張るなぁ~。俺なんか実家でダラダラしてただけなのに」
「……黒沢が帰省するって言ってたから、そこはずっとバイト入れてたよ。帰ってきたらその分いっぱい遊べたらなって……思って、その……」
しまった、と思った。黒沢中心に色々考えている、みたいな言い方。
「なぁんで最後そんなにゴニョゴニョ言うの?」
「だって何か考えたら相当気持ち悪いなって」
「そう? 俺は嬉しいし、そういうこと言うお前のこと可愛いって思うよ」
「ひっ、」
「ははっ、矢田ってば変な顔」
お前はすぐに顔に出るなぁって、黒沢は回していない方の手で、俺の髪を触った。黒沢に会うために今朝整えてきたこの髪は完全に台無し。早起きして頑張ったのにって、そんなこと分かってもらえるはずもない。
けれどもう、それに対して怒っている余裕はないし、とにかくすぐ顔に出ると言われたこの顔を見られたくなくて、俺は少しだけ下を向くと、黒沢の足を蹴って誤魔化した。
「矢田、足蹴るのなし。痛いよ」
「痛くないでしょ? エイプリルフールだからってそんな嘘つかないでください」
「嘘じゃない」
「はいはい」
「矢田、お前なぁ……!」
さっきの仕返しだと、やっぱり目線を合わせずにそう言うと、黒沢はまた、俺の髪をくしゃくしゃにした。
ともだちにシェアしよう!