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嘘? 本当?(5)
◇
映画はお昼からのにして、その後はぶらぶら歩きながら、気になる店に片っ端から入った。俺と黒沢は服の好みが合うから、気に入った服が同じブランドのもので、結局その店で買った。隣を歩きながら、同じ店の紙袋が視界に入ってくる度に、今日こうして二人で過ごす時間がデートに思えてきて、何度もくすぐったくなる胸を押さえた。
「夕飯どうする?」
「う~ん、黒沢は何か食べたいものある?」
「俺は何でもいいんだけど……。あのさ、矢田がこれと言って食べたいものなければ、俺の家で食べない? コンビニとかで適当に買ってさ」
会った時から今の今までずっと、俺の目ばかり見て話していたくせに、黒沢は急に俺から目線を逸らしてそう言ってきた。突然のお誘い。黒沢の家にはこれまでも何度も遊びに行ったことはあるし、誘われるのも不思議ではないけれど、黒沢の態度から緊張が伝わり、俺は「うん……」とぼそり返事をした。
嬉しいも、恥ずかしいも、緊張するも、好きも。黒沢は、スイッチを一度にたくさん押してしまう。そのせいで俺の心はいつも忙しい。やっと電源をオフにできてもまた、黒沢がオンにしていく。休んでいる暇がない。
隣を歩きながら俺は、紙袋が視界に入らないように、手を後ろに回した。ふくらはぎに紙袋が当たって歩きにくいけれど、視界に入るよりかは数倍マシだと思ったから。そんな単純なことでもないのだけれど。
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