126 / 230

嘘? 本当?(8)

「あー、見られちゃったか」 「え、何? 俺が見ちゃいけなかったの?」 中身を確認しなくとも箱を見ただけで分かる。これはケーキの箱だ。でもどうして、それを俺に隠したかったんだろう。 「……っ、」 お祝いする相手を、知られたくなかったってこと? ……それって、つまり、実はそういう人がいるってこと……? 「黒沢、これ、誕生日ケーキ……だよな?」 だって、今日はクリスマスみたいにホールケーキを買うようなイベントごとはない。エイプリルフールだからってホールのケーキを買いました、なんて話も聞いたことはない。だったらもう、これは誕生日ケーキとしか考えられないだろ。 「うん。誕生日ケーキなんだけど、今は見られたくなかったなぁ」 「意味が分からないよ……」 今は、って何? じゃあ後で俺に見せるつもりだったってこと? それは、ますます謎じゃあないか。俺に見せる必要性は? だって、俺の誕生日は……。 「矢田の誕生日って二週間前だったじゃん」 「……え?」 「ちょうど帰省する日だったからさ、おめでとうのメールだけしただろ?」 「うん……、」 パタンと、黒沢が冷蔵庫を閉めた。結局飲み物は取り出せていないんだけど、と今は重要でないそんなことをぼんやりと考えた。 「でもやっぱりお祝いしてあげたいなぁって思ってさ。お前は帰省しなかったし、どうせ誕生日を一人で過ごしただろ? だってほら、彼女もいないし、俺がお前の中での一番じゃん? ……って、そうじゃなきゃ困るんだけどね」 黒沢が、照れたように鼻をかく。

ともだちにシェアしよう!