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嘘? 本当?(9)
「それって、」
「だから今日、誕生日のお祝いしようと思ってケーキ買ってきてたんだよ。お前が俺の家じゃなくて店でご飯食べたいとか言ったらどうしようかって内心焦ってた。その後わざわざ俺の家に寄らないかとか、誘いにくいし。……それと本当は、最後に実はってケーキ出したかったんだけど」
待ち合わせした場所でやったみたいに、黒沢はまた俺の頬を両手で包み込んだ。けれど今度は押しつぶして遊んだりすることなく、優しく微笑みながら俺を見つめる。
「黒沢、」
「矢田、嬉しい? ……でもお前、泣きそうな顔してるな」
「だって、だって、黒沢が、」
「嬉しいの気持ちが大きいと、お前は泣きそうになるんだ?」
何が起きているのか、少しずつ分かってきた。今こうして触れられているその意味はよく分からないけれど、黒沢が俺の中で一番だと言うことも彼にとっては当たり前のことで、それってきっと、黒沢の中でも俺が一番だって、そういうことなんだと思う。もちろん、親友という立場での話なのは分かっているけれど。
俺は、黒沢に対して恋愛感情を抱いていて、だからこそいつも“してもらっている”感を強く持ってしまっていた。遊んでもらった、会ってもらった、ってそう考えていた。けれど黒沢も俺のことをこうして大切に思ってくれていることが分かって、お互いに向けている矢印は、もちろん俺から黒沢へのものが大きくて太いけれど、でも黒沢からもちゃんと俺の方へ向いているって、そう思っていいってことだよな。
ひひって、変な声が出た。お前の笑い方って面白いと、黒沢も笑う。そのせいでコツンとおでこがぶつかって、今までにないくらい近い距離で視線が交わった。
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