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嘘? 本当?(11)
「黒沢、おかしいよ……」
「どうして?」
「まるで、嘘であって欲しいみたいな言い方。俺が、そういう変な意味で好きって言うのを、望んでるみたいに、」
「おかしいのは、矢田の方だよ。自分の気持ちなのに嘘で誤魔化そうとして、しかもそれを、変な意味って言うんだからさ」
ゴンっと、おでこに頭突きをされた。黒沢の口調はキツいし、声だって低いし、あげくこうして頭突きまでされて、さっきまで甘い雰囲気に戸惑っていたけれど今は、いつもの優しい黒沢がじゃないことが怖い。
俺、怒らせちゃったの……?
何か、間違ったこと言った……?
「黒沢、」
「……ケーキを買って、今さらになってしまったけれど誕生日をお祝いをして。それから俺が矢田に言おうとしていたことを、矢田が先に言ったのに。それを否定されて、俺が、許すと思う?」
「んっ、」
かぷり。黒沢が俺の下唇を噛んだ。震える声で小さく名前を呼ぶと、黒沢は、今度はゆっくりと唇を合わせてきた。……キス、どうして。
「くろさ、わ、やめっ、……や、くろ、さ……っ、んっ、あ、」
合わせられていただけの黒沢の唇が、下におりていき、首筋にもキスを落とした。強く吸われ、痛みが走る。けれどその後でそこを、黒沢が優しく舐めるから、怖いも、痛いも、気持ちいいも、一気に全部やってきて、何がおきているのか理解できないこの頭も、理解できない中でもバカみたいに激しく動き続けるこの心臓も、壊れてしまうんじゃあないかって思った。
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