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嘘? 本当?(12)

「くろ、さ……わ、」 「俺、矢田が好きだよ。俺にとっては変なことではないけれど、矢田のために仕方なく分かりやすいように言ってあげる。俺は、矢田の言う変な意味で、矢田のことすごい好き。嘘じゃないよ」 「な、んで」  さっき強く頭をぶつけてきた俺のおでこに、黒沢がキスをした。赤くなってるね、ごめんね、とそう言いながら。 でも、痛いのはそこじゃない。痛いのは、苦しいのは、心臓の方。ぎゅうっと掴まれて、呼吸がうまくできない。……壊れる、このままじゃあ本当に壊れてしまう。 「くろさ、わ、」 今、とんでもないことを口にしたよな……? 色んなことが起こりすぎて、自分は何を理解すればいいのか分からない。何度も頭の中で黒沢の言葉を繰り返す。俺の言う変な意味で、俺のことが好き、とは? 俺と同じ気持ちだって、そういうこと? それとも、エイプリルフールの嘘なの? あるいは俺の願望が見せているだけ?   「矢田、」 「……っ、」 「だから何で、そうぐるぐるするの? 変なことを考えてなくても、確かなものがあるだろ。矢田の気持ちは? 俺は気持ちを伝えたんだから、さっき嘘だと言って誤魔化そうとしたあの言葉を、今度はちゃんと俺にちょうだい」 俺の中の、確かなもの。黒沢への好きの気持ち。些細なことも大きくなって、黒沢の前では単純なことも複雑に変わる。全て、黒沢だけが特別で、大切で、黒沢中心に俺の世界は廻っているんだ。 「黒沢、す、好き……」 「ん、よく言えました」 優しく微笑んだ黒沢に、強く抱きしめられる。俺は、大きな背中に手を回した。震えているとバレたくなくて、ぎゅっと力強く。  

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