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嘘? 本当?(14)
好きじゃあないと、嘘にして誤魔化そうとしたのは俺で。それなのに、好きだと言ってくれている黒沢を信じないのは失礼かもしれない。でもやっぱり今日はまだ四月一日でエイプリルフールだし、こんな夢みたいなこと……って、本当に夢かもしれない。
「……なぁ、矢田。それよりも、寝かせないほうがいい?」
「……っ、」
「うそうそ、」
「も、嘘はダメっ、」
「え? じゃあ寝かせないでいいってこと?」
「あっ、」
今日はもう、何を言ってもダメな気がする。これ以上何か言うのはめようと、きゅっと口を結んだ俺を、黒沢は笑いながら抱きかかえた。
止まらないと思っていた涙も、黒沢のせいですんなりと止まった。
「なんかご飯いらない気がする。ケーキも明日」
「……えっ、でもドリア温めたし、」
「温めてないよ。スタート押してなかったけど?」
「嘘、」
「……ほんと、ほんと」
何が本当で何が嘘なのか、分からなくなってきた。そう思ってレンジを見たけど、見たところで温まってるかどうかなんて分からない。ただ、温め終了の音が鳴っていないような気もするし、黒沢が正しいのかも。
「何? レンジ見てるけど、俺のこと疑ってる?」
「……う、」
「さっきから、嘘って疑ってばかりじゃん。はい、そんな矢田くんにはお仕置きです。寝かせない方向で決定」
「やだ、お腹すいた、」
「大丈夫、お腹いっぱいにしてあげる」
「……ひっ、」
甘やかしてくれるんじゃあないのかって、文句を言おうとしたけれど、やっぱり言っても無駄だろうと、俺は黒沢の胸を殴ってばたつくことしかできなかった。
END
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