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愛……?(2)

「辻~! 卵焼き~」 「ああもう! ほんっとうるさいなぁ! だったらあげるから勝手にしなよ」 辻は全然怒っていないだろうに怒った素振りを見せて、弁当箱の蓋に卵焼きを乗せると、それを太田に渡した。さすがにさっきのバカップルみたいな真似事はしないんだな、と少し安心しながら今度は大好きな春巻きを口に入れた時、そんな俺の期待に反して大きく口を開けて待つ太田に、嬉しそうなため息をつきながら結局辻はあ~んしてあげていた。 「そういうのよそでやってくれない? 俺が目の前にいるのだけど! イチャイチャすんなや!」 「イチャイチャなんかしてない! それに三浦、口に春巻き入れたまま喋らないで。汚いからさ」 「そーだそーだ!」 「うるせぇ太田。てめぇも卵焼き飲み込んでから言え!」 何か言えばこうだ。俺の存在はお前らにとって何なんだ? 毎日……いや、毎日じゃあないが、時々こうして目の前でカップルごっこが始まるのには正直うんざりしている。付き合っているのかと二人に問えば、太田はえへへとだらしなく笑っているのに対し、辻はそんなわけないだろうってムスっと否定してしまう。 それなのに俺の目の前では卵焼きあ~んの光景がしょっちゅうだし、付き合ってないのなら俺は一体何を見せられているのかと混乱してくる。こんなんじゃあ自分の立ち位置だって分からない。 ただの友人としてここにいればいいのか? 本当は応援してあげるべきなんじゃあないのか? それとも俺にだけ内緒にしているって、そういうこと? だってその卵焼きってさぁ……。 「あー! 太田てめぇ今日の昼休みは委員会活動って言っただろ! 何のんきに昼飯食ってんだよ! さっさと来い!」 突然、モヤモヤした俺の感情をぶっ飛ばしてしまうくらいの大きな声が教室中に響いた。ただでさえ目つきが悪いのに、さらに怖い目をして、太田と同じ委員会に入っている安井が怒鳴りながら俺たちのところにやってきた。彼が怒るのも無理はない。太田はたいてい委員会をサボっているからだ。

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