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愛……?(3)

「なぁ、太田よ」 「んあ?」 「んあ? ……じゃあねぇよ。何だよその間抜けな返事は! さっさと来い! 話し合いが始まってんだよ!」 「安井っちやめてよ~! 痛い!」 「安井っちて呼ぶな! 来い!」 太田よりは小柄だけれど安井は力があるから。あっという間に太田を引きずって教室からいなくなってしまった。見えなくなっても廊下に声が響いていて、太田が抵抗しているのが分かった。それの何がおかしいのかは分からないけれど、辻はクスクスと笑っている。相変わらず頬は赤いままで、目にはそういう色が浮かんでいるように俺には見える。……なぁ辻、やっぱりそうなんじゃあないの? 「俺、卵焼きのこと知ってるんだぞ」 「……えっ、」 「たまにお前が作ってるだろう? 卵焼きの見た目が少し悪くて、そういう日はお前はやけどしてか指が少し赤くなっている。だから、そんなことは容易に想像できるぜ」 「……っ、」 その通りだろう? 俺の考えは間違っていないはずだ。だから、お前はいつも何だかんだで嬉しそうに食べさせてやっているんだ。お前が作った日に限って太田は卵焼きをねだるし、辻にとったらいいことしかないもんな。自分の料理を好きな奴がおいしいと食べてくれるのだから。それに太田だっていつも……。 「……っ、」 言えばいいのに。言ってくれればいいのに。俺はお前らと長いこと友人やってて、けっこう色んなことが分かっているんだ。俺は一人で勝手な結論を出したわけだけれど、辻が言ってくれれば、俺は一人でこうして考え込むこともないし、友人なりに何かしてやれるんじゃあないか。 まだ、そうなっていないのなら、そしてお前がそうなりたいと願うのなら、それこそ俺の出番だろ? お前と太田のことだけれど、俺だって仲間に入れて欲しい。言ってくれれば応援してやれるのだから。

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