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こんな展開、望んでなかった! 続編(2)
◇
「裕樹 くん、ちょっといいかな。話したいことがあるのだけれど……」
片方だけ耳にかけられている髪が色っぽい女の子に話しかけられた。誰だ? と思い視線をずらしてみれば、胸元には赤いバッジが付いている。知らないのも当たり前だ。赤いバッジだからこの人は先輩だ。
「話って何でしょう……?」
ついこの瞬間がやってきたのかと、緊張で喉が鳴った。いつも周が俺の隣にいたから女子だって手出しができなかったものの、周が先生に呼ばれて席を外している今ならば、俺にそれなりの制裁を加えるのも容易なことだろう。
「周くんと、付き合っているって本当?」
「えっ、あの、それは……」
どこかに連れて行かれると構えていたのに、この先輩は教室の中で話を始めた。クラスの奴も興味深そうに俺らのやり取りを見ている。額には冷や汗が滲み、俺はズボンを握りしめた。
「本当に付き合ってる?」
「……それは、周が……あの、」
「付き合ってないのならさぁ、私と付き合わない?」
「…………へ?」
先輩が口にしたのは思いも寄らない言葉だった。ぽかんとしたまま見ていると、先輩は優しい顔をしてクスクスと笑い始めた。
「ふふっ、周くんを返して、とでも言われると思ったのかな? 驚かせてごめんね。ほら、周くんはすごい人気者だけれど、この学校の女子全員が彼を好きなわけじゃないし、私たちみたいに彼に対して興味を持っていない子も多いのよ」
「え……」
「知らなかった? そして今まで周くんに興味のなかった女子たちは、裕樹くんファンになっている子が多いの。周くんにいじられている裕樹くんが可愛いって噂になってるよ」
「……お、俺?」
「そう。普段は周くんが隣にいるから話しかけにいけなくて裕樹くんは気づいてないのだろうけどね」
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