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こんな展開、望んでなかった! 続編(4)
もうすぐ授業が始まるからと帰って行った先輩を見て気づくべきだった。そんな時間だったのだから周だって先生から解放されて戻って来る頃だと。後ろから聞こえてきた周の声に心臓が飛び出そうなくらい驚いた。
「きゅ、急に声かけてくるから……!」
「……怪しいな。俺がいない間に何かあった?」
「い、いや、な、何もない、何もないよ」
早く席に着かなきゃ授業が始まるよと、周の背中を押した。顔を覗き込まれてしまったら動揺がバレてしまうから、俯いたまま。
「ほら、もうチャイム鳴るから」
「裕樹!」
周に知られたら何をされるか分からない。きっと怒って俺のことをみんなの前で辱めるに違いない。最初だってキスされたんだ。今回だってもしかしたら……。
「……っ」
またキスをされるかもしれないと、想像したら頬の熱が上がった。周の唇の感触を思い出してしまった。何をやっているんだ俺は。
「お前やっぱり何かあっただろ。顔が赤いぞ」
「っ! これは違う!」
「これは違う?だったら、これ以外には何があるんだ?」
「……ああもう! 全部違う! ってか何もない!何かあっても周には関係ない!」
どんっと勢いよく体を押した。周がよろけた隙に掴まれていた手を振り払い、自分の席に着く。どうやら周は椅子に足をぶつけたらしく、「いてぇ……」と低い声でそう言うと俺をギロリと睨んだ。けれどそれに対して俺は何も反応を返さず、教科書を立てて広げるとそこに顔を隠した。
「裕樹」
「……っ、」
「裕樹ってば」
「う、うるさい! ばか! 黙れ!」
隣の席から周が何度も俺を呼ぶ。それに一応は、汚いけれど言葉を返しつつも、顔を上げることはしなかった。この一時間、何があっても顔は見せないようにしよう。さすがに一時間あれば、もう何を聞かれても落ち着いて誤魔化せるだろう。
先生がドアを開ける音がした。横に座る周から顔が見えないようにと、指先で髪を弄る。チッと舌打ちが聞こえてびくりとしたけれど、それは聞こえない振りをした。
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