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こんな展開、望んでなかった! 続編(5)
◇
午後の授業を全て乗り切り、後は帰るだけになった。ほっと安心したのも束の間、ドアの横に立っている先輩に顔が真っ青になるのが分かった。そうだよ、返事を聞くために放課後また来ると、そう言っていたじゃないか。周から逃れることに必死ですっかり忘れていた。
「裕樹くん、返事聞きに来たよ」
「裕樹、コイツ誰だ?」
一緒に帰るつもりで俺の横にいた周が、聞いたことのないくらい低い声を発した。わざわざ顔を見なくても分かる。完全に怒っている。いつも俺を甘やかしている周からは想像できないトーンだ。
「いや、あの、これは……」
「やっぱり俺がいない間に何かあったな?怪しいとは思っていたけど、そういうことか」
「いたっ、」
ぐっと、腕を掴まれた。後ろから優しく抱きしめてくる時の強さと、これも違う。俺はその差に泣きそうになった。別に悪いことをしたわけじゃないのに、どうして俺がこんなに責められなきゃいけないのか。付き合うことをいつ認めたんだ。確かに流されてはいるけれど、でも恋人ごっこは全部周が勝手にしていることだろう?
「周、痛いよ」
「ねぇ、周くん。例え、無理矢理でもそうでなくても、あなたと彼が恋人だとして、だからって私が彼と会話をするのにあなたがここまで干渉してくるのはおかしくない? 私一応先輩なんだけど」
「で? 言いたいことはそれだけですか?」
「周っ、本当、痛いよ! やめて」
俺の腕を掴んでいる周の手に自分のを重ね、離して欲しいとお願いするも、周はやめてくれない。それどころかそのまま俺を引っ張り、先輩を押しのけて教室の外へと引きずられるようにして連れ出された。周にそんなことをされたからますます顔が見られなくなるし、もう抵抗しても無駄だと思い、大人しくついて行くことにした。
……何が、何がみんなの前で辱められる、だよ。何が、キスされるだよ。全然違うじゃないか。
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