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こんな展開、望んでなかった! 続編(8)
考えたこともなかった。周のこれまでの全ての言動は、俺のことを好きだからという理由以外にないと思っていた。……これのどこに間違いがあるって言うんだ? だから俺も、これまでのしばらくの間、散々困ることがあったんだろ。みんなの前で告白されて、あげくキスまでされて。あの周が俺にそんなことをしたから、だから俺は……。
「……あ、」
好きだと言われたのは、キスされたあの時だけだ。『なぁ、裕樹。だったらお前が俺と付き合え。俺の好きな奴は、お前だから』と、そう言われた時だけだ。これまでの数ヶ月、周は俺に構ってばかりだったけれど、一度も好きだと言われたことはない。……キスだってそう。あれ以来一度もされたことはない。頬への軽いキスさえも、一度もないんだ。
『自分で言ったんだし、断るなよ』
ああ、そうだよ。俺が言ったんだ。周の告白を断る奴なんかいないって。俺がその言葉を口にしなければ周は、好きな奴が俺だと言うこともなかったかもしれない。
興味ないと言いつつも、どうせ断る相手からたくさんたくさんキリもなく告白され続ければ嫌にもなってくるだろう。それがなくなるのなら、たった一度俺に好きと言ってキスする方がマシだと思ったのかもしれない。
「一部の噂を鵜呑みにしないで。自分が愛されてると思わないで」
「……っ、」
可愛いはたくさん言われてきたけれど、可愛いなんて言葉、簡単に口にできるよな。
何を勘違いしていたんだろう。あれだけ美形でモテている周が、平凡でバカな男の俺を好きになるはずがないんだ。それなのに、周に好かれて迷惑している、みたいな被害者面して、それこそ本物のバカだろ。
「……何も言い返せないってことは、私の言ってることが分かったってことよね? 分かったなならそれでいい。調子乗らないでね」
言葉が刺となって胸に突き刺さった。もうこれ以上言うことがなくなって背中を向けたその女子を見ながら歯を食いしばった。自分の価値を否定されて、その上自分でもそれを認めてしまったようなもので。それなのに別のことが悲しくてたまらなかった。
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