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見つめたその先に。(7)
◇
昨日は結局眠ることができず、寝不足のまま学校に来た。目の下のクマは、彼にも心配されるほどで。彼には、酷い顔をしているから見ないで欲しいと言って逃げたから、今日はまだ朝の挨拶しかしていない。でも、見ないで欲しいは、ただの言い訳だ。昨日彼であんなことをしてしまったのに、いつものように目を合わせて会話なんかできるわけがない。
課題は、終わらせることができずに初めて提出しなかった。先生はお前が忘れるとは珍しいこともあるものだと驚いてそのままにしてくれた。ああ、どうしたら良いのだろう。昨日の光景が、何もかもを狂わせている。
「昨日、俺たちのこと見てたの?」
「……あ、」
朝学校に来た時から、類くんの視線を感じていた。昨日のことを何か言われるかもしれないと構えていたものの、いざこうして呼び出されてみると、そんな構えは無意味だと分かった。構えていたところでこの緊張は収まらないのだから。
実際は僕が望んで見た光景ではなく、見せつけられたという感じで、しかもそのせいで色々と大変になっているというのに。けれど今はそんな言い訳は通用しないのだろうと、何も言えずに俯くことしかできない。
「神井の奴、沢田がいるならそう言えばいいのに、全部終わった後に沢田が見てたこと言うんだもん。課題忘れたのも俺らが教室にいたせいだろ? ごめんな」
課題を忘れることになってしまった事実よりも、もっと深く奥の方に突き刺さっている二人の触れ合い。謝られているのに、違う言葉が頭から離れない。
“全部終わった後”
その全部はどこまでを意味するのだろう。ファスナーをおろして、パンツ越しに触るだけ? お互いのを擦り合って、達するまで? それとも、僕が妄想した……体を繋げるところまで、シたの?
そもそも男同士じゃあないか。それなのに、誰が来るかも分からないあんな場所で触れ合うのは許されるのか? いや、男女でもいけないことだけれど。
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