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見つめたその先に。(8)

「類くん……」 「なに?」 「その……、二人は、付き合っているの?」 ただの体の関係にしては甘かったあの光景を見れば聞かなくても分かることだろうに、どうしても確かめたくなった。その事実が知りたかったのではない。類くんの反応が見たい。ただそれだけ。 「うん、そうだけど」 どうしてそんなに当たり前のことを改めて聞いているんだ? とそう言うような目で見つめられ、僕は自分の胸元をきゅっと掴んだ。 「男同士、なのに……? その気持ちを、すんなり受け入れられたの?」 「は?」 「おかしいと……そう思わなかったの? 男なのに、男を好きになることに、違和感を持たなかった……?」 止まらない。理性なんかこれっぽっちもないみたいに、言葉が口から溢れ出す。僕が目を逸らしてきたその事実に対して、どうしてこんなにも冷静で、余裕でいられるのだろうか。僕は二人がそういう関係だと分かる場面にいたわけで、それは類くんにとったら危険なことじゃあないのか? バレたくないことがバレてしまったと、そうは思わないの? 二人の関係は、秘密にしておきたい……、ううん、秘密にすべき関係であるはずなのだから。 「……なにそれ。喧嘩売ってるわけ?」 「いや、そういうつもりじゃあ……」 「だったら沢田には関係ないところまで突っ込むなよ。嫌なもの見せて悪かったけれど、だからって俺らを否定していいわけじゃあない」 鋭い視線を向けられた。それでも止まらない。 「……っ、でも、でもっ、男同士じゃあないか! どうしてそんなに落ち着いていられるんだよ……! 僕が二人の関係を知ったというのに、どうして……! 僕を呼びだして何を言うかと思えば、ごめんと謝るだけって、おかしな話だろ……! 俺らのことはバラさないで欲しいと、そう頼み込むところじゃあないのか……!」

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