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見つめたその先に。(9)
蓋をして無理矢理押さえて来た何かがどっと溢れ出したのだろう。叫び声を上げるように喚く自分が、自分でも怖いと思った。指先が震える。心臓はもう限界だと泣いていて、僕の目から涙が溢れた。
「そうやって突っかかって何がしたいの? 俺は神井が好きだし、神井も俺が好きだよ。ただそれだけのことだろ。バラさないでと頼み込むところってお前は言うけれど、バラされたって俺らの関係は変わらない。男なら、絶対女と付き合わなきゃいけないのかよ……! そんな決まり、誰が作ったんだ。もし仮にそうだとしたって、俺は神井を選ぶよ。神井だって俺を選ぶ。何も間違っていないし、悪いことなんかないだろ……!」
「……っ、」
「二人じゃなきゃあ、幸せになれないんだよ。俺は神井がいい。神井しかいらないの……」
あぁ、ダメだ、ダメ。奥底にある感情が刺激されて出てきてしまいそう。お前が出てきたら、僕は、僕は……。
「……なぁ、もしかしてお前も同類か? 軽蔑の眼差しを向けているかと思えば、違うな。羨ましいってそんな目をしてる。沢田。何が羨ましいの? お前の中でおかしいと思うことを俺らがすんなり受け入れていることに対してか?」
羨ましい。
「僕はっ、」
羨ましい。羨ましくてたまらない。
僕がいつも彼を見つめてしまうその気持ちがまるで恋じゃあないかと、……そう、恋じゃあないかとどこかでは分かっていても、でも彼も僕も男なのだからそれは変な話だと、否定して、否定して、そう思い込んできたその事実を、類くんは否定することもなく、息をするように当たり前のことだと思っているのだ。
そしてそれは神井くんにとっても同じことなのだろう。二人はそんなふうにお互いのことを考えている。……羨ましい。僕には、無理な話だ。
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