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見つめたその先に。(10)

「否定するか、そうしないかは相手が決めるんだ。もし女が告白してきたって、それが沢田の好きな奴でも好みの奴でもなければ断るだろう? それと同じだよ。必ずしも受け入れられるわけじゃあない。だけど、相手に対して抱く好きの感情は、自分にとっては大切に温めてきた愛おしい気持ちだろう? 相手が誰だろうとそれは関係ない。だから沢田……、自分で自分の気持ちを否定するな。向き合ってやれよ……、な?」 「……うぅ、……っ、」   僕の気持ち。否定してきた僕の気持ちは、星野くんが大好きだと、もう引き返せないほどに大好きだと、そんな、泣きたくなるようなものなのに。僕が向き合って、それからどうしたらいいの。否定するか、そうしないか……? 類くんはああ言ったけれど、これは星野くんに言うまでもない。否定されてしまうともう分かり切ってるじゃあないか。やっぱり男女の告白とは違うのだ。否定された後、また友人に戻れるのだろうか。肩を貸してと、その後も僕に触れてくれるのだろうか……。 あぁ、類くん。君は強いよ。君と神井くんだから、できることなんじゃあないかな。 「……類くん、ごめんね。ごめん……、ごめんなさい」 「いいよもう。俺も怒鳴って悪かったな。沢田が俺と同類じゃあなくて、今だけ同性を好きになっているのだとしても、俺、話とか聞くからさ。こんなに叫ぶ沢田は初めて見たし、驚いた。今まで一人で抱えてきたものがあまりにも大きいんだなぁって思ったよ」 「……っ、」 「もう泣くなよ、な?」 二人きりの教室に、僕のすすり泣く声が染みていく。類くんにはひどいことを言ってしまったのに、彼は責めることもなく優しく僕の背中を撫でてくれた。何度も何度も、大丈夫だと囁きながら。その声にまた涙した僕は、怖くてたまらないけれど、自分のこの気持ちにやっぱり向き合うべきだと、そう思って唇を噛みしめた。

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