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見つめたその先に。(11)
◇
「沢田、今日のお昼は委員会活動があるから、一緒にお弁当食べられないんだけど、大丈夫?」
あと一時間乗り切れば昼食の時間という時に、彼にそんなことを言われた。わざわざ僕の席にまで来て、申し訳なさそうな顔をしている。
お昼はたいてい数人で食べているし、彼が抜けたところでそこまで気を遣わなくていいのにと思いながら、大丈夫だよと返せば、どうやら彼以外も何かしらの用事で今日は僕だけしかいないらしい。
「待っててもらおうかと思ったんだけど、もし長引いた時に困るしなぁ。沢田、一人でも大丈夫か?」
「ふふっ、大丈夫だよ。子どもじゃあないんだから」
オッケーと、指で形を作って彼に見せると、今度はほっとしたような顔をされた。何にせよ、そこまで僕の心配をしてくれたのは少しだけ嬉しい。そうして彼に向かって微笑んでいると後ろから肩を叩かれた。振り返って見れば、神井くんと類くんがいた。
「沢田、今日お昼一人ならさ、俺らと一緒に食べようぜ」
へへっと、人懐っこい顔で笑う類くんだけれど、この二人と彼を一緒に見ると、あの日のことを思い出してたまらなく居心地が悪くなる。
彼に対して申し訳ないと思わなければならない行為をしてしまったのに、類くんに言われてからほんの少し……、彼に渡して笑われたような砂粒くらいは、仕方のないことだと思えるようになった。そうして毎日砂粒ずつくらいでも仕方のないことだと言い聞かせて少し忘れられていたのに。
こうして全員が揃ってしまうとやっぱり罪悪感の方が大きく前に出て思い出されてしまう。気まずさから黙っていると、彼に顔を覗き込まれた。
「ほしっ、の、くん……っ」
「……類と神井って。なぁ沢田、お前は二人とそんなに仲良かったっけ?」
「えっ……?」
突然縮められた距離と、何か言いたそうな表情に戸惑っていると、類くんが後ろから僕の首に腕を回した。ぐっと引き寄せられ、類くんの髪に僕の頬が触れる。くすぐったくて身を捩ると、神井くんが僕の頭をぽんぽんと叩いた。
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